VIDEO REVIEW · REALITY CHECK

ChatGPTでG-codeを生成できる? ある正直な実験動画が最良の答えをくれた

ChatGPTでG-codeを生成できる? ある正直な実験動画が最良の答えをくれた——記事カバー画像
要点(TL;DR) DIYチャンネル Random Routing はある実験を行いました。図面をChatGPTに渡し、最終的に走るG-codeを産出する、というものです。しかしアーキテクチャこそが要点です——作者はAIにG-codeを書かせず、「読図してフィーチャと寸法を見つける」ことだけを担わせ、構造化された中間データ(seed)を出力させます。それをスクリプトがDXFへ描き、レイヤーの規則に従ってCAMソフトへ渡し、テンプレートでコードを生成させます。作者の原文はこうです。「これは、私たちがAIに機械のG-codeを直接生成させることに依存していないことを意味します——それは危険でしょう。」このDIY実験は、まさにプロのAI CAMの正しいアーキテクチャを示しています。AIが理解を行い、決定論的な規則と検証が出力を行う。汎用チャットボットと専用AI CAMの違いは、GコードやMコードを書けるかどうかではなく、工具ライブラリ、機械の制約、シミュレーション、検証というひと揃いの安全機構を持つかどうかにあります。

01この動画は何を語っているか

2025年3月、DIY加工チャンネル Random Routing がこの概念実証動画を公開しました。「Drawing to gcode using ChatGPT(ChatGPTで図面からG-codeへ)」。タイトルは定番の「AIは万能」系の内容に聞こえますが、実際に開くと、稀に見る正直な工学実験でした[1]

Random Routing の概念実証:ChatGPTが読図を担い、スクリプトとCAMテンプレートがコード生成を担う(YouTubeで開く

同種の内容は実は少なくありません——たとえばChatGPTでプラズマ切断の図案を生成するチュートリアル(まず画像を生成し、SVGへ変換し、CADで整える)[2]——が、Random Routing のこの動画が特別なのは、作者が説明欄にシステムのアーキテクチャと、なぜそう設計したかを完全に書き出している点です。

02実験の巧みな点:AIは「理解」だけを行い、「出力」はしない

作者の説明によれば、全体の流れはこうです[1]

  1. ChatGPTが読図し、フィーチャと寸法を見つけることだけを担い、部品情報を含む構造化された「seed」を出力する。
  2. 一本のスクリプトがseedを解析し、決定論的にDXFファイルを描き、異なるフィーチャを対応するレイヤーに配置する(外輪郭、内輪郭、標準穴、小穴、座ぐり穴、タップ穴……)。
  3. CAMソフトがこれらのレイヤーを認識し、事前に検証済みのテンプレートに従ってG-codeを生成する。

そして動画全体でもっとも価値あるひと言、作者の原文はこうです。「これは、私たちがAIに機械のG-codeを生成させることに依存していないことを意味します——それは危険でしょう。」[1]一つのDIYチャンネルが、多くのAI製品プレゼンが語りたがらない工学的判断を、ひと言で言い切りました。

03なぜチャットボットに直接G-codeを書かせてはいけないか

汎用言語モデルはもちろんG-codeを「書けます」——GコードとMコードは公開標準(ISO 6983がプログラム形式とアドレスワードを定義)であり[3]、ネット上に学べる例が大量にあります。問題は三つの層にあります。

学理的にも、製造における深層学習の成功例(フィーチャ認識で約96.7%の精度に達する研究がその一例)はいずれも共通の構造を持ちます。モデルが知覚と理解を担い、その出力は決定論的な工学パイプラインに入って制約・検証される[4][5]——このDIY実験の直感とまったく一致します。

04専用AI CAMパイプラインはどんな姿か

Random Routing の手作りアーキテクチャを工学化し、規模化すれば、それがプロのAI CAMの姿です。BestAI CAM を例にとると、対応関係はきわめて直接的です。

DIY実験のやり方専用パイプラインでの対応
ChatGPTが読図してseedを産出AIが2D図面(DWG/PDF/写真補助)を認識し、3Dモデルを構築
スクリプトが決定論的にDXFを描きレイヤー分け自社の工具ライブラリ、コントローラ、ストローク/回転数の上限に従い工程と刀路を推論
CAMが検証済みテンプレートでコード生成G-code生成後に3D切削シミュレーションを強制し、削り過ぎ・干渉・衝突をチェック
作者自身が結果を見張る独立したAIが寸法を元図と照合+専門人員が実機前にゲートキープ

違いは「誰のAIが賢いか」ではなく、安全機構の完全性です。専用パイプラインは、DIY実験で作者の個人的な慎重さによって維持されていた一つひとつの防線を、システムに組み込まれた必須のステップへと変えます。だからこそ、私たちはこう言い続けています。AI CNCツールを評価するなら、G-codeを生成できるかを問うのではなく——生成した後、実機にかける前に何段の検証が立ちはだかるかを問え、と(全工程は〈CNC自動プログラミング完全ガイド〉、生成AIのできること・できないことは〈生成AIが工場に入る〉をご覧ください)。

05よくある質問 FAQ

ChatGPTは結局、使えるG-codeを書けるのですか?

単純な形状で、条件のゆるい場面(彫刻機の線描きなど)なら、文法的に走るプログラムは書けます。しかし文法が正しいことは物理的に安全であることと同義ではありません。あなたのコントローラの方言、工具、ストローク制限、保持を知らず、一行の誤りの代償は衝突と廃棄です。動画の作者のやり方がまさにこの理由で、AIには読図だけをさせ、コード生成は決定論的なスクリプトとテンプレートに委ねています。

このDIY動画と商用のAI CAMの違いはどこにありますか?

アーキテクチャの直感は同じ(AIが理解し、規則が出力する)で、違いは工学的な完全性です。商用パイプラインは工具ライブラリと機械の制約を推論に取り込み、切削シミュレーションを強制し、独立した寸法照合と人によるゲートキープを加えます。DIYが個人の慎重さで維持する防線を、システムの必須ステップへと変え、フライスなど代償のより高い場面にも対応できます。

AIコード生成ツールを評価するとき、もっとも問うべき一つの問いは何ですか?

「G-code生成の後、実機にかける前に、何段の検証があるか?」です。良い答えには少なくとも次が含まれます。自社の工具ライブラリと機械の制約に従った生成(汎用の仮定ではなく)、強制された3D切削シミュレーション、独立した寸法照合、そして実機前の人による最終確認。検証チェーンを欠いたコード生成の速さは、リスクを消すのではなく後ろへ送るだけです。

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06参考文献

  1. Random Routing(YouTube)。Drawing to gcode using ChatGPT(2025-03-09 公開)。youtube.com/watch?v=vOyaLsN6V7A
  2. Slyh Life(YouTube)。How to Use ChatGPT to Create CNC Plasma Designsyoutube.com/watch?v=YCC2JAts80g
  3. ISO 6983-1:2009. Automation systems and integration — Numerical control of machines — Program format and definitions of address words. ISO.
  4. Zhang, Z., Jaiswal, P., & Rai, R. (2018). FeatureNet: Machining feature recognition based on 3D Convolutional Neural Network. Computer-Aided Design, 101, 12–22.
  5. Wang, J., Ma, Y., Zhang, L., Gao, R. X., & Wu, D. (2018). Deep learning for smart manufacturing: Methods and applications. Journal of Manufacturing Systems, 48, 144–156.